マサイ族の暮らし

ケニアという一つの国にはなんと43の民族が暮らしている。地域によってメジャーな民族というのは違うのだが、ナイロビ辺りで最も人口が多いのがキクユという民族だ。民族同士の対立もあるし、それぞれ言語も違うし、と、それなりに問題も抱えてはいるのだが、彼らは国の共通語であるスワヒリ語を話し今日も穏やかに暮らしている。その中で最も特殊な民族とされるのが、日本でも名前を良く知られているマサイ族だ。彼らがなぜ有名なのかというと、他の全ての民族が現在では多くの生活習慣を現代風に変え、車に乗りインターネットを使う生活をしているのに対し、彼らは唯一彼らの生き方を貫いているからである。今回はそんなマサイの村を訪れ、話を聞くことができた

マサイ語で「こんにちは」は「スップ」、「ありがとう」は「アシェ」というんだよ、とマサイ族のイメージの似合わないジョンという名前の青年が話し始める。彼がこの村のガイドをしてくれた。この辺には約200のマサイ族の村があるが、僕らがいるこの村は人口約160人程で10家族が住んでいるだけの小さな集落だ。彼らは定期的に場所を少しづつ移動しながら生活している。村ごと移動したら郵便物が届かないじゃないか・・という心配はいらない。郵便どころか電気もガスも一切ない。

ここは一番近い文明のある村から車で2時間程走り、整備された道路はなくなり、そこからサバンナを50km程進んだマサイマラ国立公園の一帯だ。シマウマやガゼルが近くを悠然と歩いていることだってざらだし、もしかしたらライオンだって通ってもおかしくない

マサイ族の少年達は15歳になると割礼をして、そのあと5年間家族と離れてサバンナで暮らすのだという。口を利くことができるのは同じ年で同じようにサバンナで暮らす事になる30人だけ。彼らは日頃は茂みで暮らし肉食動物から自分を守り、雨風をしのぐため洞窟で寝るという生活をする。そうして自然との付き合い方、例えばどの植物に毒があるかどうかとか、野生動物との共存について学ぶのだという。ドラゴンボールで孫悟飯がピッコロに鍛えられる中で自然の中で放置されるというシーンがあるが、本当にそんなことをしている人たちがいるとは。。。。驚きだ

村では牛を家畜として放し飼いにしているため、糞が大量に散らばっている。そのためハエもとんでもない数だ。払っても払ってもまとわりついてくるので、次第に払うのを諦めた(写真は、ハエがまとわりついている2歳くらいの少年。衝撃だ。。。)

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6人のマサイ男子が僕のために伝統的な踊りと歌を踊ってくれる。マサイ族の踊りは必ずジャンプが含まれる。このジャンプはとても大事だ。結婚するとき、ダウリーという習慣がある。これは男性側の家族が女性側の家族に贈り物をあげるというものなのだが、その新郎が一定以上高くジャンプできると、ダウリーもディスカウントされるのだという。その場を見てみたい。きっと笑ってしまうのだろうけど。そんなわけで彼らのダンスもジャンプが中心だった。疲れているのか僕のような観光客に見せるのに飽きてしまったのか、あまりやる気がない感じだったが・・・・・

一人の男が、ライオンの毛皮の帽子を持っていた。これは、彼が20年前にライオンと格闘し、腕や顔に傷を負った末に勝利を収めた時に記念にはがしたのだという。マサイ族が赤い服を着ているのは、ライオンのような肉食動物は赤を嫌うからという理由からだが、やはりこうして隣り合わせの生活をしていると、遭遇することもあるそうだ。だから彼らは常に護身用の剣を携帯している。
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マサイ族の中では重婚は当たり前みたいで、ジョンの父親は3人妻がいると言っていた。その2人目の妻のための家は今建てられているところだ。家を建てるのは女性の仕事で、主に木と泥を固めて建てる。この建築様式だと9年に一回立て替えないといけない。その立て替えるための材料を獲得するため常に1~2km移動しながら暮らすのだという。家の中も見せてもらったが電気もない家に大勢の家族が暮らしているようだった。つつましくも微笑ましいような生活だった

マサイ族は火をおこすのにもマッチを使わない。木からとった枝を加工して擦り合せて火を起こす。一切の文明を使わない生活がここにはあった。最もジョンが携帯電話を持っているように、マサイ族にも、都市に行って文明のある生活をする人もいないわけではない。親の方針にもよるのだ。都市に移住する子は前出の15歳からの野生生活はせず、進学し、大学にも行き、やがてはナイロビやモンバサなどの大きな都市で就職する。5年間の野生生活をする少年は、町には出ずサバンナで伝統の生き方を守って生きていく。それも人生の選択だ。いい時間を過ごし、村を後にした
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“sekai no yume”
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